(C)yamakita

高エネルギー加速器研究機構探検記 J−PARCに潜ってみた

大強度陽子加速施設

2008年8月18日
 宇宙作家クラブの見学会ではないのだが、これも面白かったので、記録しておくことにする。
 茨城県東海村に、高エネルギー加速器研究機構が現在建設中のJ−PARC(大強度陽子加速器施設)を見学し、まさに建設途中の色々な施設を見せてもらえる機会があった。
 その中には、今は見られるものの、一度完成して稼働してしまえば、人間が死んでしまうほどの高レベル放射線を発するので、もはや二度と見ることのできない部分もあった。
 これらの写真を撮ったので、せっかくだから公開してみようと思う。
 もちろん、J−PARCにも様々な施設があり、数多くの研究がなされている。けれども、それら全てを理解するのは無理がある(色々説明していただいたのだが、あまりの情報量に、こちらの頭が付いていけなかった)。
 そこで、メインに見た。ニュートリノ実験施設について紹介してみよう。
 これは、地球クラスの大きさを持った、ものすごく巨大な実験施設だ。
 まず、このJ−PARCで、ニュートリノを大量に発生させて、粒子ビームとして打ち出す。このビームは、少し斜め下(つまり地下)に向けて発射される。
 地球は丸いので、斜め下に向けて発射されたニュートリノも、いつか地表に現れる。そこで、ニュートリノを計測し、その性質を調べようというのだ。
 そして、その地表に現れる場所というのが、岐阜県飛騨市神岡にあるスーパーカミオカンデだ。つまり、ニュートリノビームは、スーパーカミオカンデを打ち抜くように発射される。
 これを、T2K実験(Tokai村からKamiokaへという意味らしい)という。
 その距離は、300kmほどもある。
 300km先にある、直径50m以下の物体(スーパーカミオカンデはそのくらいの大きさだ)に粒子ビームを命中させるなんて、何かSFドラマの1シーンのようだが、これは現実だ。
 さすがに、砲身があって、それを調整して狙撃するというわけにはいかない。地上と地下に、砲身に相当するものを建設する。これが100m以上あるだろう。とはいえ、いい加減に作るわけにはいかない。100mでの1cmの狂いは、300km先の30mの狂いになってしまう。つまり、1cm狂えば、もはやスーパーカミオカンデに命中させることはできなくなってしまうのだ(実際には建設後の微調整もできるし、砲身に相当するものは、余裕を持って作られているようだが、狂わないに越したことはない)。


J-PARCより転載した図


撮影 山北&細江写真クリックで、大きな写真
 というわけで、入り口の看板から。
 ここに見学に行ってきたんだよ。
 入ったすぐそこに掲げてあった横断幕。うれしかったんだろうなあ。
 監視室らしい。といっても、警備室という意味ではなくて、実験施設の監視と管理とを行っているところという意味。
 説明してくれた、多田将さん。なんか、工事の人と間違えそうな出で立ちだが、立派な博士なので、間違えないように。
 というわけで、見学中のヘルメット姿。首から提げているのは、ガイガーカウンターとかではなくて、単なる無線機。イヤホンで説明してくれる。
 でかいヘリウムタンク。こういうタンクが、他にもいくつもある。
 使い終わったニュートリノを捨てるごみ箱。
 捨てるときは、ゴミの分別が大事。ちゃんとニュートリノ・アルファ線・ベータ線・ガンマ線などに分類して捨てないといけないんだよ。
 って、信じるわけねーだろ。もちろん、研究所の人たちがギャグで張ってある。(ギャグじゃなくて、単にニュートリノ研のゴミ箱、っていう意味だと思うけどなあ。)
 放射線計測器、いわゆるガイガーカウンター。
 これが鳴ったら、慌てて退避。まあ、滅多なことでそんなことは無いのだが、備えておくことは必要だ。
 まだ建設中の施設なので、あちこちで工事が行われている。
 さすがに建物工事は終わっているが、配電関係はまだまだみたい。
 地下に入るときに身につけておく酸素濃度計。ガス漏れなどで酸素濃度が落ちてしまう前に、わずかな変化の時点で知らせてくれる。
 実際、下に行くと、あちこちにこのような簡易酸素マスクが置かれており、いざというときに備えている。
 この青いパイプの真ん中を、粒子が光速に近いスピードで飛ぶ。
 もちろん、今は工事中なので、稼働していない。
 ここは、A地点の分岐部分。
 ここで、加速器から分岐させられた微粒子が、少し地下へ向けて、向きを変える。そして、ここから向かう300km先には、スーパーカミオカンデが待っているのだ。
 さっきの青いパイプが、延々と伸びているのが見えるだろう。
 青いパイプの設置位置は、ほんのわずかでもずれるわけにはいかないので、下のような調整機構がついている。これを回して、ミリ単位のずれも修正する。
 実は、太い青いパイプ(こいつは色違いの、別の機能があるのだが)の中を微粒子が飛んでいるというが、実際に粒子が飛んでいるのは、その中の直径10cmほどのパイプの中だけなのだ。
 では、周囲は一体何の役に立っているのかというと、粒子をカーブさせたり(でないと、加速器を丸く作れない)、粒子を加速させたり(でないと、粒子を速くできない)する機能がある。
 実際には、粒子を曲げる機能がほとんどで、粒子を加速しているのは、一周1600mのうちわずか数10mほどしかないそうだ。
 なんともったいないと思うかも知れないが、これが合理的なのだそうだ。確かに1600mのうちの数10mだが、どうせ粒子は、加速器を何周も(いや何万周何億周も)するのだ。1回の加速はわずかでも、何度も何度も加速するうちに、累積した速度は非常に高速になる。
 こっちが粒子加速器。全部で、10mほどの長さしかないのだが、こここそが粒子を加速してくれる最も大事な機構。
 A地点で別れた粒子が進む先のB地点には、こんな建物がある。といっても、重要な部分は、地下にあるのだが(何しろ、斜め下に打ち出すわけだから)。
 建物の地下には、こんな巨大な箱がある。今だからいいけど、この箱の中は、高レベル放射線でいっぱいになる。
 加速器で加速した粒子を、この箱の中にある炭素棒(だったはず)にぶつける。すると、大量のニュートリノが発生するという仕掛けだ。
 その炭素棒というのが、これ。
 こんな小さな棒を入れておくために、あんなどでかい箱が必要になるのだ。
 でも、この炭素棒、粒子がぶつかってニュートリノやら他の粒子やらを発生させているうちに、だんだんと消費されて減ってくる。
 減った炭素棒はどうするかというと、交換するのだ。だが、炭素棒は放射性物質となっており、人間には強すぎる放射線をバンバンだしている。ちょいと、箱の中に入ってひょいっと交換してくるというわけにはいかない。
 そこで、人間を非難させておいて、リモートコントロールのクレーンで、蓋を持ち上げ、そうしておいて、別のリモコンで、炭素棒を交換する。
 そのリモコン操作盤が、これ。
 リモコンの上に見えているのは、窓で、窓の向こうにはクレーンがあり、さっきの巨大な箱がある。
 巨大な箱の中に設置される機械。
 真ん中の漏斗みたいな部分に、炭素棒が差し込まれる。
 この機械でも、わずかに向きを変えて、粒子の進行方向を調整することができるらしい。
 でも、これで終わりではない。この先に、銃で言うなら砲身にあたる部分がある。
 これは完全に地下にあるので、地上には入り口だけだ。写真の後に鉄で足場が組まれているが、あれが地上入り口にあたるコンクリの建物。ここからでは見えないのだが、見かけは公園の公衆便所くらいの小さなコンクリの固まりにドアが着いていると思ってくれればいいだろう。
 さて、地下へとご招待。
 さて、地下に着いた。といっても、天井はないので、上から光は入るのだが。
 現在位置は、大砲の砲身の真ん前に立っているのだと思ってもらうといいだろう。
 人が出入りしている巨大な長方形の穴が、砲身だ。
 砲身内部に入って、その内壁を写している。
 パイプと、それに続く壁のふくらみは、冷却剤が通るところ。
 奥の光は、上の写真で写した砲身の出口。
 その砲身の先に、さらに巨大なコンクリの固まりが置かれる。
 まあ、カミオカンデに送りたいのはニュートリノだけなので、それ以外の粒子を止めるためにあるのだろう。