(C)hosoe hiromi 細江ひろみ

METAL HEAD


メタルヘッド

私が記事を書いたのは旧版です。

原作者様のサイト

マダム・グリゼルダの
「ハンターとして生きる方法」

昔、雑誌に書いたTRPG『METAL HEAD』の職業紹介記事
初出 RPGマガジン '93.5 No.37

 ガンショップ「グリゼルダ」へようこそ。アタシがこの店の女主人(ルビ;マダム)グリゼルダだよ。
 今日は、ガンショップのマダムにじゃなくって、 (*1)のグリゼルダに用があるっていう顔をしているね。
 まずは、アタシの話しをよくお聞き。そして忘れないことさ。

*1ブローカー ハンターへの仕事の仲介を生業(ルビ;なりわい)とする。

「ハンターになるための素質」

 自由に生きるってことは、厳しいもんさ。ほとんどのヤツは、不自由でもいいから安楽に生きていこうと思っている。
 だけど、ハンターになりたいんなら、世間を甘く見ちゃいけないよ。楽がしたいだけなら、今すぐアタシの店を出ていきな。最近そういうヤツが多くって、アタシは閉口してるんだ。
 アンタたちが今までにどんな生き方をしてたとしても、何を捨ててきたとしても、それはアタシの知ったことじゃあない。もしアンタが楽な生活を目指してるんだとしても、アンタ自信の目標のために、アンタが喜んでハンターをやれるんなら、アタシは文句をつけるつもりはないよ。

ハンターに向かないヤツ

 ただし、アンタがどんな不幸をしょってたとしても、それから逃げだすためにハンターになろうと思っているんだったら、とっとと帰りな。ドラッグ(*2)にもサイバースペース(*3)にも飽きたからといって、スリルを求めてハンターになろうだなんてヤツもお断りだよ。
 不幸から逃げるんなら、こっちの迷惑にならないところで、勝手にドラッグに溺れるなり、自分で自分の頭に銃弾を撃ちこめばいいのさ。スリルだけが欲しいんなら、ミュータント(*4)どもと一緒に荒野をうろつくなり、アングラゲーム(*5)でもするんだね。
 でも、アタシのサイバーアイ(*6)が交換可能なうちは、自堕落なヤツラにハンターを名乗らせるつもりは、単分子ナイフ(*7)の切っ先ほどもないからね。

*2ドラッグ 薬。合法的な便利なものから、非合法の危ないものまで、いろいろある。
*3サイバースペース 多数のコンピュータと、それを結ぶコンピュータネットワークを、複合的かつ感覚的に捉えたもの。
*4ミュータント まともじゃない生き物。危険。
*5アングラゲーム 非合法殺し合いゲームの総称。
*6サイバーアイ 機械作りの精巧な義眼。よく見える。
*7単分子ナイフ ものすごく鋭いナイフ。

ハンターに向いたヤツ

 貧乏なヤツが金欲しさにハンターになっちゃいけないのかって? バカいっちゃいけないよ。貧乏をやめるためにハンターになるんでも、貧乏から逃げだすために嫌々ハンターになるんじゃなくって、金持ちになるための手段のひとつとしてハンターを選びなっていってるんだよ。
 アンタの心の中に、誰にも奪えないアンタの夢や希望ってもんはないのかい? アンタはアンタをイキイキと光らせる生きがいを持ってやしないかい?
 アンタがとんでもない窮地に陥ってもうダメだっていうときに、それでもアンタに生き延びるための努力をさせてる“何か”が必要なのさ。そして、生き延びた後にそれを誇りに思えるような生き方をさせてくれる“何か”じゃなくっちゃいけないのさ。
 それがあるんなら、アンタは立派にハンターとしてやっていけるだろうね。

生き延びるには

 自分の実力に自信がないんなら、それを補う方法を考えることだよ。たとえばほとんどのハンターはチームを組んでいるだろう? 誰も万能にはなれないけど、自分に出来ないことを出来ないと認め、それぞれの専門家に徹することによって、別々にやっているときより大きな成果を得ることができるからなんだよ。
 だけど、自分の力を最大限発揮することは、常に必要なんだよ。
 たとえば、サイバー化(*8)だよ。アタシがいい医者を紹介してあげるから、アンタの弱点をカバーし、アンタの長所を伸ばせるように、カラダを着けかえるんだ。
 だけどその前に、アンタがどんなハンターになるつもりなのか、ちゃんと決めなくっちゃいけないよ。それによって、着けるもんが違ってくるんだからね。
 いいかげんなことすれば、いつかそれで命を落とすことになるんだから、借金してでもちゃんとサイバー化しなくっちゃいけないよ。ただし、必要のないサイバー化は故障の原因にしかならないんだから、やりすぎはいけないよ。
 ハンターの仕事場の大部分をしめる荒野は、メンテナンスショップからはちょっとばかり離れすぎているんだからね。
 自分の命を大事にするために、金と時間を惜しんじゃいけないよ。それより大事なものはありゃしないんだから。だからといって、仲間の命より自分の命を大事にしたり、自分の命より仲間の命が大事だなんて考えてもいけないよ。
 いいかい、命は秤に掛けられやしないんだ。たとえ自分の命を犠牲にすりゃあ、仲間の命が助けられるってときでも、命と命を天秤にかけないでおくれ。
 誰かの犠牲がなきゃあ生き延びれないチームなんて、どうせ長持ちはしないもんなんだし…… 生き残ったもんの気持ちを、ちったぁ考えてほしいもんだよねぇ。


*8サイバー化 身体を機械と取り換えること。生身のときより便利な機能がいろいろついてくるが、故障することもある。

ハンターズ

 さて、ひとことでハンターといっても、いろいろいるからね。どんなハンターがいて、どんな仕組みで仕事をこなしているのかよーく考えて、自分にあった仕事を選ぶんだよ。

●ブローカー
 アタシがやってるのがブローカーだよ。ハンターたちのマネージャーだと思ってくれれば間違いないよ。
 仕事中にアタシの身体半分がふっとばされる前は、アタシはあるチームの専属ブローカーとして現場で活躍していたのさ。隠退してからはこうやって、たくさんのチームやフリーのハンターと、取り引きをしているんだよ。
 いきなりブローカーになろうってヤツは少ないだろうけど、どんなハンターでもブローカーとは取り引きをすることになるだろうから、話しだけはしておくよ。
 ブローカーっていうのは、取り引きのプロなのさ。
 ハンターに仕事を頼みたいヤツと、仕事が欲しいハンターをひきあわせるのが、アタシみたいなブローカーの仕事なんだよ。成功したハンターには、必ず腕のいいブローカーがついているものさ。
 いいブローカーはアンタに合った仕事を紹介してくれる。そうすれば生き延びる確率が高くなる。生き延びたときには腕も上がってるし金も入る。入った金で装備を整えれば、またまた生き延びられるっていうもんだよ。
 それにデビューしたてのハンターには、なかなかまともな仕事がまわってこないもんなんだよ。せいぜい手伝い仕事でガキの小遣いを稼ぐ程度さ。
 デビューしたてで、しかもチームを組むべき仲間とも出会っていないハンターの場合はもっと悲惨だよ。捨て駒にされるのがオチだからね。
 そこで、アタシが登場するんだ。
 アタシはいろんな仕事を取ってきて、その仕事に裏がないかどうかを調べる。
 それからアタシが契約しているチームの中から、ちょうどそれにピッタリの能力を持っているチームを探して、そいつらに仕事を回す。
 仕事にピッタリのチームがないんなら、フリーのハンターとチームをくっつけたり、フリーの連中を集めて即席のチームをつくったりする。
 チームに装備が足らないんなら、そっちの手配をすることもある。
 こういったことをするブローカーがいなかったら、アンタがチームを組めそうやヤツと出会うことだってなくなるだろうね。
 それどころかチームを組んでいたって、なんかの専門知識を誰も持っていないだとか、ある装備が足らないっていうだけで、仕事を逃してしまうもんさ。
 それだけじゃない。実力以上の仕事を受けちまったり、力があまりまくっちまうような仕事に忙殺されたりするもんなんだよ。
 簡単そうに見えるけれども、これがなかなか大変な仕事なのさ。だからアタシはそのチームの一員として、稼ぎの一部を遠慮なくもらう。もし、充分金を取らないブローカーがいたら、手間仕事の手を抜いていたり、アンタたちを騙してないか、注意するんだね。タダほど高いモノはないんだから。
 注意深くしていれば、アンタらは生き延びて実力をつけるだろう。そしたらアンタらと契約をしたがるブローカーも増えるだろうし、アンタらに直接仕事が舞いこむようになるはずさ。そうなったらアタシにかまわず、やれるだけやるんだよ。
 アンタらがヨソのブローカーのところで高い評価を受ければ、アタシんとこの評判もよくなるっていうもんだよ。
 腕がいいチームを一つでも多く知っているってことが、ブローカーの評判を決めるもんなんだからね。

●ハスラー
 アタシたちの住んでいる都市のまわりには、延々と荒野が広がっているね。
 一見なんにもない荒野だけれども、見る目を持ったヤツが見れば、そこにはいろんなお宝が眠っているんだよ。
 それを見つけて手に入れるのが、ハスラーなんだよ。
 たとえば、アタシたちが生まれるずっと前に滅びた文明の遺産。今残っているのはガラクタばかりだけれども、時にはものすごいアタリもある。
 たとえば、大昔の家具屋の遺跡を見つけたヤツがいる。そのハスラーはねばったあげく、いろんな条件が重なって完全保存されていた家具屋の倉庫を見つけた。
 スゴイじゃないかい。ハスラーが一度は見る夢だよ。
 え? どこがすごいのかわからないって?
 全部が全部ってわけじゃないけどさぁ、大昔の家具は天然の木でできてんだよ。
 天然の木でできた本棚、天然の木でできた机、天然の木でできたイスがわんさとでてきたのさ。(*9)
 これで、そのハスラーがどんなにすごいモノを見つけたのか、わかっただろう?
 あとは、金になる生き物。ミュータントの中でも、特に害獣として指定されているヤツだったら賞金が出るし、皮や肉が売り物になることもある。
 昔のまんまのミュータントじゃない生き物なら、植物でも動物でも金になるだろうね。そんなのは滅多にいないけど。
 だけど、そんなのよりもっとたくさんいて、金になる生き物がいる。
 都市から逃げだし、荒野に住みついている凶悪な犯罪者。バンデッド(*10)のことさ。
 ヤツらが凶悪であればあるほど、高い賞金がかけられている。
 バンデッドはほっといても、荒野に出ているハンターを襲ってくるから、結局は倒さなければいけない敵になるけれども、殺したバンデッドの賞金を受け取れるのはハスラーだけなんだよ。
 ハスラーだけが法で認められた賞金稼ぎで、ハスラーじゃない者にとっては自分の身を守ったことにしかならないのさ。
 だから、ハスラーは宝探し(ルビ;トレジャーハンター)とも、賞金稼ぎ(ルビ;バウンティハンター)とも呼ばれている。
 そのどっちをメインにするにしても、荒野で一獲千金を狙っているのが、ハスラーなのさ。
 ハスラーをやってくんなら、才能と幸運に自信がなくっちゃだめだよ。そして筋金入のロマンチストじゃなくっちゃ、ハスラーの地道な苦労には耐えられないよ。
 都市にいるときゃ、広大な荒野のどこにお宝があるのか、ありとあらゆる情報をひっかきまわして調査をしなきゃならない。危険な荒野のまん中で、嫌になるほど地面をほじくりかえさなくっちゃならない。やっと何かを見つけたら、それを横取りしようってヤツと戦わなくっちゃならない。
 なんでも出来なくっちゃいけないけれども、永遠にひとりでやっていくわけにもいかないから、それぞれのエキスパートの手を借りることが、絶対に必要になってくるのさ。だから、他人とうまくつきあえなくっちゃやってけない。ま、これはどんな仕事をしていても、同じだけどね。
 逆に、いろんなことが出来て、しかも賞金首を金に換えることができるハスラーは、どんな仕事のときにでも一緒にいてほしいもんだねぇ。

*9天然の木 この世界では自然破壊により、木材が恐ろしく貴重な品になってしまっている。
*10バンデッド 荒野に住みついている徒党を組んだならず者。よく仕事中のハンターを襲ったり、ハンターに襲われたりしている。

●ランドブラスター
 一言でいえば、運び屋のことさ。
 マシンに積み荷と命を乗せて、都市から都市へと荒野をつっきるのがランドブラスターなんだよ。
 マシンといっても、掛け出しはバイクあたりから始めることになる。生き延びれば、趣味にもよるけれど、もっと大きなマシンに買い換えることになるだろうね。
 まず、ランドブラスターは自分のマシンと、サイバーリンクシステム(*11)によって固く結ばれるんだ。マシンはランドブラスターの脳と直結し、文字通りランドブラスターの手足となる。
 そうやってランドブラスターの手足となったマシンでもなけりゃあ、荒野は危険すぎて走れやしない。
 もちろん道だってないし、一見平凡に見える地面の一歩先の足元はどうなっているか誰にもわかりゃしない。
 砂の中のデザートオクトパス(*12)や、地表の下に隠された深い亀裂に足を突っ込んでしまった後で、その危険から生きて抜けだすことができるのは、マシンと一体となったランドブラスターにしかできない技なんだよ。
 そりゃあ危険を予測するのも大変さ。ありとあらゆる危険を予測して、それを回避する方法なんてどこにもないんだ。回避できなかったからこそ、それを危険だっていえるのさ。だからこそ、ランドブラスターの腕を頼るしかないのさ。
 ランドブラスターになるんなら、マシンを扱うプロフェッショナルとしての誇りを持ってほしいところだね。マシンを乗り回すのが、好きで好きでたまらないっていうヤツ向けの職業さ。
 さて、ランドブラスターが荒野を移動するスペシャリストだってことはわかったね。
 じゃあ誰がどういう理由でランドブラスターに荷物運びを依頼するのかは、わかってるのかい?
 もちろん、ハスラーに頼まれてハスラーを荒野のまんなかに運んで、ラッキーならハスラーが見つけた物を都市に持って帰ってきたりもする。
 でも、そんな仕事はそうそうありゃしない。
 ランドブラスターが主に扱うことになる積み荷っていうのは、ちょっとばかりわけアリの品なのさ。
 亜軌道シャトル(*13)も使えなきゃ、企業が金にあかせて装備を整えさた幌馬車に乗せるのもはばかられるような荷が、アタシらハンターのところに回ってくるんだよ。
 荒野に幌馬車が走っているのかって? バカいっちゃいけないよ。幌馬車っていうのは、企業と専属契約を結んでいるランドブラスター連中のことさ。いわば、サラリーマンさね。アタシらハンターの仲間じゃないよ。
 さて、ワケアリの荷ってもんがどんなもんか説明するからよくお聞き。
 アンタもブラックマーケットに行ったことはあるだろう? まっとうな店で売っている物のと同じ品が、三割り四割りはあたりまえ! ってくらい割引されて売られているだろう?
 そんなに騒がしくないって? いちいちうるさい子だねぇ、アンタは。小奇麗な正規の店より活気みたいなもんがあって、そーゆー感じがするじゃないか。
 そういう店で扱っている品が、ランドブラスターが運んできた品なんだよ。
 なんで手間暇かけてランドブラスターが運んできた品のほうが、正規の店で売っている品よりも安くなるかっていうと、どこの都市でもめちゃくちゃな輸入関税をかけているからなんだよ。
 それから、正規の店じゃあ絶対にお目にかかれないような、怪しい品だっていっぱいある。アタシはそんなブラックマーケットをうろついて、掘りだし物を見つけるのが、おもしろくってたまらないのさ。
 アンタはスカをつかまされたって? そりゃあ年期の差ってもんだよ。
 話しがずれてるから、もとへ戻せって? まったく、いい物を見わけて手に入れる方法を身につけていないと、大事な時に弾の出ないような銃をつかまされて、泣きを見ることになるっていうのに。ブツブツ
 ランドブラスターが運ぶ一番まっとうな品が、そういったブラックマーケットで売られるための、密輸品なのさ。
 ブラックマーケットがなくなったって、ちっとも生活に困りゃしないなーんてヤツは、そうざらにいるもんじゃあない。もしまるっきり密輸品が持ちこまれなくなったら、すぐに暴動になるだろうね。だから違法でも、生活必需品ならば公安だってそうそう厳しく取り締まれない。
 だからといって、公安がチェックしてこないだとか、まるっきり見逃してくれると思ってるんだったら、そりゃ世間を甘く見ているっていうもんだよ。
 ランドブラスターが運ぶ荷物には、危険きわまりない品や、厄介な品もある。そっちの品が、当局には目ざわりなんだよ。
 ランドブラスターだって運ぶ品を選ぶんだけど、ペーペーランドブラスターに仕事を選ぶ余裕がそうそうあるわけじゃないし、運ばせようってほうもヒッカケてくるヤツが多いからね。とくに生き物と企業ガラミの品には注意するんだよ。
 おいしいことをいいながら、自前の幌馬車を使う気がしないほど危険な品を、どんなふうに危険かも教えずに押しつけてくることなんか、ザラなんだからね。
 たとえば、実はヤバイ連中からの盗品だったり、非合法の危険なブツを捨てるに捨てられず、存在しない受取人に渡すようにとランドブラスターに押しつけてトンズラ決めこむヤツとか、何があるかわからないから、充分注意するんだよ。
 こういった積み荷の裏取りは、アタシたちブローカーもちゃんとやってるけど、アンタたちも手間をかけておく習慣をつけとくことが、長生きするためのコツだよ。
 絶対確実な、アンタに対して嘘をいうはずのないヤツからの依頼でも、ウ飲みにしないで調べてみるんだよ。その依頼主もダマされているのかもしれないんだし、そういった仕事についてはハンターのほうがプロなんだからね。
 そして後々までの安全対策をきっちり立てて、危険に見合うだけの報酬をもらうのが、ランドブラスターの商売っていうもんなんだよ。

*11サイバーリンクシステム 脳とコンピュータを直結するためのシステム。
*12デザートオクトパス タコの怪物
*13亜軌道シャトル この世界の標準的な超距離移動手段。大気圏の気象が異常なため、その上を飛ぶ。

●ネットライナー
 さてーと。そろそろ情報収拾がどんなに大事なことなのか、わかってきたんじゃないのかい?
 その専門家が、ネットライナーなんだよ。
 アタシらブローカーがアンタらに仕事を紹介する前に、きっちり裏を取ってるっていったろう? アタシは何人かのネットライナーと契約をしていて、入ってきた仕事をチェックしてもらっているのさ。
 ネットライナーが何をするかはわかってるね。身体にうめこまれたジャックイン端子(*14)を使って、どこの都市にでもあるコンピュータネットワークにもぐりこみ、コンピュータを操作して情報を収拾するのさ。
 そんな誰でもやっているようなことで、なんで仕事になるのかわからないって顔をしてるね。
 そりゃ、誰でもコンピュータから情報を引き出せるし、コンピュータはどこにでもある。
 ちゃんと市民権を持っているヤツなら、脳直結の光ファイバー端子を使って、指一本で夕飯の予約から支払いまですませられる。
 ネットにジャックインしてサイバースペースを散歩したからといって、なんの自慢にもなりゃしない。
 だけど、ハスラーが荒野の中からお宝を見つけるように、ネットライナーはサイバースペースからお宝を見つけ出すことができるのさ。
 どこかへまぎれこんでしまったネタを探し出したり、誰かが故意に隠したネタを取り戻したり、誰かがネタを隠すのを手伝ったりするのさ。
 そりゃ、犯罪者(ルビ;ハッカー)じゃないかって? とんでもない。ネットライナーとハッカーを一緒にしちゃあいけないよ。
 もし、アンタがちっとも悪いことをしていないのに、ある日突然アンタが凶悪な犯罪者で賞金首だって、コンピュータに記録されちまったとか、見知らぬロボットがアンタを殺さなくっちゃならないと思いこんで、アンタを追いかけて来たとする。
 そんなことをするのが、ハッカーさ。コンピュータの記録を書き換えたり、ロボットのシステムをノッとって、悪さをする連中さ。
 そのハッカーのイタズラの標的になっちまったとしたら、アンタはどうしたらいいと思う?
 公安にいくって? アンタがいっていることが本当で、コンピュータの記録が間違っているんだ、って証明するのは大変だよ。公安にとっては、あんたの無実を証明するより、アンタを危険人物だとして扱う方が、簡単なんだから。
 なにしろ、本物の危険人物が嘘の申請をしてきているのかもしれないんだし、公安がアンタの自由のために、手間を掛けなきゃならない理由なんて、なんにもないんだから。
 なんとかアンタが無実を証明したとしても、何年かかることやら。追いかけてくるロボットは、そんなに待ってはくれないだろうね。
 もしアタシがそんな目に合ったら、まずハンターに依頼するよ。
 依頼されたハンターは、まずアタシの安全を確保して、次にネットライナーが間違いを正す。コンピュータの記録を元に戻し、ロボットのシステムを奪ってアタシを殺させないようにする。
 これが、ネットライナーなんだよ。
 たしかに合法じゃあないけれども、法律っていうもんは常に正しいわけじゃないし、平等でもないんだよ。
 つまり、ランドブラスターの運んでくる物資がアタシたちの生活を支えているように、ネットライナーだってアタシたちの情報を支えているんだよ。
 とはいえ、ネットライナーが活躍するのは、サイバースペースの裏通りだけじゃないんだよ。カシコいネットライナーは、滅多に非合法エリアには踏みこまないものなんだ。
 なぜだかわかるかい?
 品性のよしあしの問題じゃあないよ。
 カシコいネットライナーほど、複雑に入り組んだサイバースペースを、縦横無尽に駆けまわって、合法的にトラブルを解決する手段を見つけるものだからなのさ。
 逆にマヌケなネットライナーは、目の前にブラさがっている危険に気づかずに、チームを全滅させちまうこともある。
 あんただって、天気予報を聞き損ねてシムール(*15)にやられた、なんてドジは踏みたくないだろう?
 いくらなんでも、そんなにマヌケなことはしないって? いいや、百回うまくやっても一回ドジればおしまいなのさ。
 最後に、ヤバイネタに近づくときでも、合法的なネタに近づくときでも、それを気に喰わない誰かがいるのなら、ネットライナーはそいつと戦う羽目になるだろうね。
 サイバースペースの中でのイメージファイトは、自分の存在を掛けた戦いだよ。それに勝つには、強い意志を持つことが必要だよ。

*14ジャックイン&ジャックイン端子 サイバースペースに入ることをジャックイン。そのために必要な、人体にとりつけられた端子(ルビ;コネクター)。
*15シムール 異常な気象現象。300度の熱嵐。

●ブロックバスター
 一言でいうと、コンバットシェル乗りのことだよ。
 それにはまず、コンバットシェルについて説明しなきゃならないだろうね。
 コンバットシェルっていうのは、中に入っている人間通りの動きをしてくれる人間型のマシンのうち、飛べるヤツのことだよ。いわば、人間をスーパーマンにしてくれるマシンなのさ。
 知ってるって? 
 だけど、本物のコンバットシェルは、娯楽番組のヒーローが乗っているヤツより、ずっと汗臭いものなんだよ。単純に人間をスーパーマンにしてくれるわけじゃないんだ。空が飛べるといっても、一瞬だけさ。目的地にむかってミサイルみたいに飛んでいくだけで、方向を変えることだって簡単にはできはしない。
 思い通りに動かすには、相当の力とコツが必要だし、乗ってるヤツとマシンがツーカーだっていうことは、マシンのツケを動かしているヤツが払わなきゃいけないっていうことなのさ。
 コンバットシェルは器用貧乏なマシンなのさ。戦争には使いにくいからこそ、軍の放出品が巷に出まわって、割合安く買うことができるんだよ。
 とはいえ、戦争には使いにくい兵器でも、ハンターにとってはちょうどいいマシンなのさ。なにしろひとりで動かせるし、大きさも手頃だ。いろんなことに使える。その上安く手に入る。
 その証拠に、街中の暴動鎮圧や、犯罪に対してはちゃんと使われているだろう?
 使えるヤツが使いさえすれば、よく出来たマシンなのさ。
 そこで思いだしてほしいね。コンバットシェルは、使えるヤツがつかわなくちゃあ、ただのデク人形になっちまうんだよ。
 ランドブラスターと同じで、コンバットシェルが好きでたまらないヤツが、ブロックバスターになることが多いようだね。

●バウンサー
 さて、バウンサーは知ってるだろう。この物騒な世の中で一番需要が高い、戦闘の専門家さ。
 戦闘の専門家といっても、丈夫で力持ちである必要はないんだよ。
 ちょっと考えてごらん。どんなに肉体を鍛え上げたって、バウンサーが戦かわなければならない相手は、肉弾戦をしかけてくるワケじゃないんだから。
 バウンサーが扱う戦いっていうのは、銃からミサイルまでなんでもアリなのさ。つまり、バウンサーは戦闘の専門家というよりも、戦争の専門家なんだよ。
 バウンサーひとりじゃ、戦争は無理だって? 必要ならこっちも仲間をバリバリに武装させるんだよ。それを指示するのは、バウンサーの役目だよ。
 武器、ドラッグ、サイバー化、何を使おうがアンタの自由。
 でも、戦争に勝つのは武器の性能じゃないよ。
 武装するより、常に正しく状況を把握したり、とっさの判断を下したり、武器を効果的に使うことが必要なんだ。
 それができるベテランバウンサーなら、単分子ナイフ1本で武装したアーミー10人の価値があるっていわれている。
 バウンサーはひとりでも戦えるけれども、バウンサーに求められるのは戦闘指揮官の役割なのさ。
 ハンターのチームには、バウンサーの他にも戦える者がいるんだ。
 そいつらを指揮してチームを生き延びさせるのが、戦闘の専門家としての、バウンサーの仕事なんだよ。
 あっちこっち内戦やら暴動やら、物騒だからね。いいバウンサーのいるチームは、そういったゴタゴタに手を焼いている連中から、引っ張りだこだよ。

 さて、これでアタシの話しはおしまいだ。
 ハンターといってもいろいろあるっていうことが、わかっただろう?
 どんなハンターになるか決まったかい?
 決まったら営業免許を取っておいで。
 わかんないことや心配ごとがあったら、いつでもグリゼルダの店を尋ねておいで。
 うちはいつでも、ハンターのタマゴを歓迎するからね。