(C)hosoe hiromi
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戦士ヴィエの冒険
細江ひろみ(M−ヴィエ)

2004.11〜

まずは自己紹介

(VICON)まずは、みなさん、自己紹介してちょ。
(VICON)設定などは好きにしてよい。

 とRPGは、キャラの自己紹介?から、始まるものなのだそうだ。なるほど、そうしないと、キャラどうしが出会っても、相手が何者か、わからない。
 おっと、それ以前に、自分が何者なのか、知っていなければ、自己紹介のしようがないではないか。

 私は・・・・ヴィエは何者だろう。
 まず、女である。
 歳は、冒険に出るころだから、15歳くらいだろうか。
 なんで、15歳の女の子が、冒険に出たんだ?
 親は反対しなかったのか?
 きっと、反対する家族はいないんだ。
 親を殺されての、仇うちの旅かもしれない。
 それなら話しが合う。
 仇打ちをするには、まず相手より強くなければ、話しにならない。
 だから、強い人を見つけたら、その力を学ぶのだ・・・・・
 本気で仇討ちをしようと思っているのなら、「仇を探しています」などと
 看板を立てたりはしないだろう。
 特に、自分に力の無いうちは。

 私はもとより、ノリやすい性格であった。とっさにそこまで考え付けるのなら、さっさとかっこいい名前を考えつきたかったものである。
 で、とりあえず、そこまで考えたわりには、実際のヴィエの自己紹介は、つまらないものになってしまった。

(戦−ヴィエ)「私はヴィエ、戦士になりたくてここへ来た」

 これだけである。これだけだったが、このヴィエの言葉は、私自身にも、当てはまる。私がRPGをやってみたいと思っていたのは、現実にはできない事を、RPGの世界の中で出来るかもしれないと、思ったからだ。だから、計算がややこしそうでも、興味をもっていたのだ。どうあがいたって現実には、私は魔法使いにはなれないし、剣を振り回して暴れたならば、残りの人生は、すごくつまらないものになるだろう。
 ヴィエの自己紹介は、とてもつまらなかったが、他の3人の自己紹介は、ヴィエのものとは、まったく違っていた。
 自然な会話の中から、その言葉を発したPCが、どんな人物であるかを、浮き上がらせたのだ。

(戦士ザム)「金がねぇから、手前たちと一緒に動く羽目になったんだ…」
(盗賊ウォール)「金?、そんな物は人様の財布にあるじゃねーか」
(戦士ザム)「人様の金は取らぬ」

 性格も設定も、数値じゃないんだ・・・。そうか、RPGとはこうゆうものなのか・・・。
 こうして、「自己紹介」が終わると、いよいよ現在の状況が、マスターによって、説明された。

(VICON)みなさんはとある村の酒場にいる。
(VICON)一獲千金をめざして冒険の旅の途中にある。
(VICON)自由に酒を飲んでいるつもりで話してください。 ヴィエ

 最後の「 ヴィエ」とゆうのは、この発言がヴィエに対するものだとゆう、記号だ。
 そのマスターのセリフが終わらないうちに、それぞれのプレイヤーが、それぞれのPCを、マスターの作り上げた世界に没入させていく。

 村の酒場で、しばらく雑談がある。ウォール、ザム、バスクが話し始める。それぞれの性格、関係が作りあげられ、さらに明確になってゆく。
 なにか、この酒場の雰囲気とゆうものを感じはじめた。小さな村のはずれの酒場。多分フロアは9畳くらい、大きく丈夫で分厚い木のテーブル。薄暗いなかに、ランプの明かり。そういったものを、PCの会話から、勝手に想像する。
 その酒場で男が3人酒を飲んでいるが、どう見ても村の人間ではない。胡散臭げな目付きの男、いかにも戦士らしい奴、にこやかだが何かを秘めた老人。これだけ怪しげな連中には、なんて話しかけたらいいのかさっぱりわからない。ので、とりあえず話しかけないことにした。
 でも、黙っているわけにはいかない。それでは参加した意味がなくなってしまう。だからといてって、あまり浮き上がってしまうのもいやだ。せっかく雰囲気にひたりはじめているのだから。
 私は考える。ヴィエになったつもりで、その酒場にいたとしたら、私はどうするだろう。酒場に、3人の客がいる。客がいるなら、店の人もいるだろう。ヴィエは、なんの為にここにきたのか。そう考えたとき、自然にヴィエがこれからどうするのかが、わかった。
 まず、ヴィエは強くなりたい。強くなるには、強い人を探して、教えをこうのだ。強い人を探すために、酒場にきたのだ。酒場の主人なら、このあたりで一番強い人を知っているのだろう。しかし、店でものをたずねるには、先になにか買うのがセオリーだ。
 まてよ、ヴィエは、金を持っているだろうか。私はヴィエのポケットの中を、想像してみる。旅に出た時に、集められるだけのお金を持って出ただろう。しかし、そんなに大金であるはずがない。小銭ぐらいだろう。これから、どうやって食べていけばいいのか、わかりはしないが・・・。
 これで、ヴィエがどうするか、わかった。そのヴィエの行動を、私はマスターに、申告する。

(戦−ヴィエ)「あの、親父さん、これで、食べ物をください」・・小銭
(戦−ヴィエ)「親父さん、ここで、一番強いのは、誰ですか?」

 そのとき酒場に、一人の女性が入ってきたと、マスターが言った。マスターが、女性を演じ始める。言葉使いから、子供ではないが結婚もしていない、若いがしっかりした村娘を想像する。名前をクレアと言うそうだ。
 そうしておいて、いきなり話題は、プレイヤーの方に飛んだ。

(VICON)(ところでヴィエって女性だね?)
(戦−ヴィエ)(15くらいの子娘のつもり)

 なぜ、いきなり話が、こんな方に飛んだかとゆうと、私はヴィエを、女性だとは、一言も申告していないからである。自分が女なので、つい、わかりきったことと思いこんで、自己紹介のときにも、言い忘れてしまった。
 PCの性別は、勿論自由に決められるから、私が「ヴィエは女です」と言わない限り、誰にもヴィエの性別は、わからないわけだ。それと同じで、年齢や、背格好も、言わなければ、他人には一切つたわらない。
 そうゆう意味だと思ったが、もしかすると、マスターが興味を持ったのは、PCのヴィエではなく、私自身の性別かもしれない。後で聞いた話ではあるが、プレイヤーが女性である場合は、PCが男であれ女であれ、あまり関係ないのだそうだ。しかし、プレイヤーが男性である場合に、PCを女性として設定するのは、「気持ちが悪いので」回りから嫌がれるのだそうだ。
 もっとも、チャットでは相手の顔も声もわからないから、本人の性別ですら、その人の申告を信じるしかない。だから、逆に男性が女性PCを演じようがなにしようが、それは、本人の自由とゆうことになっている。
 私の知っている例では、男性プレイヤーが、自分のPCが女性である事を言い忘れて、回りのPCやマスターから、ずっと男性PCだと思われていたり、男装の女性を、男性プレイヤーが演じていたことがあるが、チャットでのプレイに限定すれば、何の問題もないようだ。ただ、そのプレイを、目の前で見たいとは、あまり思わない。
 話しを戻すと、酒場の親父さんは、クレアの父親がいちばん強いと教えてくれた。さっそくクレアに、話かけてみることにした。こんな感じで、会話はすすんでゆく。

(戦−ヴィエ)「あの、クレアさん」
(VICON)クレア「はい、何か?」
(戦−ヴィエ)「あたし、強い人をさがしているんです」
(戦−ヴィエ)「クレアさんのお父さんが、一番だとききました」
(VICON)クレア「強い人・・・私も強い人を探しているのです」

 クレアのこの反応は、以外だった。もしかしたら、ヴィエの行動は、普通はNPCがやるはずのことで、RPGの流れをくずしてしまったのでは、ないだろうか。
 それとは別に、その場にいる他のPCも、思い思いに、口を挟んでくる。

(魔道師バスク)「強さばかりが華ではないわい」
(戦士ザム)「けっ、習ったもんなんか役にたたねーよ」 ヴィエ

 渋くていいなあ。どうしてとっさに、こんなにもぴったりくるセリフを、PCに喋らせる事が、できるのだろう。
 それはそれとして、クレアさんがなぜ強い人を探しているのか、聞いてみることにした。もちろん、ヴィエにも、なぜ強い人を探しているかと、聞かれたが、それには「仇を討つためだ」とは答えず、「強くなりたいから」と答えておく。両親を殺され、本気で仇討ちをしようと考えているヴィエが、あっさりと、知らない人に、仇討ちの事を話すとは思えなかったからだ。
 一方クレアの方は、「でも、強さが仇になることもあるのですね」と、クレアの事情を、説明してくれた。
 なんでも、その強さを見込まれて、オーク退治に行ったまま、帰ってこないのだそうだ。しかも、後になってから、そこにはオークだけでなく、トロールまでいると、わかったのだそうだ。
 ・・・しかし、オークだのトロールだの言われても、私にはそれがモンスターだとしか、わからない。

(VICON)オークは野蛮な鬼の種族です。
(VICON)トロールとは大型の人喰い鬼です ヴィエ

 そう言われても、すぐさまイメージがわくわけでもない。コンピューターのRPGにも、勿論出てくる、メジャーな怪物とはいっても、そんなに印象が深かったわけではない。

(魔道師バスク)「トロールか。それは厄介じゃな」 クレア
(盗賊ウォール)「トロール退治に一人でいったのか、無茶なことを」 クレア

 説明よりも会話から、トロールがオークよりも数段恐ろしい怪物であることだけは、見当がついた。
 そこでヴィエも、これらの怪物については名前を知っているだけなのだ、と割り切ってしまうことにした。
 そうしているうちに、盗賊ウォールが「いくら出す?」と商談に持ち込む。このへんのタイミングなど、そつのないものだ。ザムもバスクもトロール退治に乗り気を見せはじめる。
 ついさっきの、習って強くなれるものではない、とゆう言葉はうなずけるものがある。それならこれは、見のがしてはならない実戦の場だろう。それにうまくクレアの父親を救い出したら、その見返りに剣術の一つでも教えて貰えるかもしれない。そんな打算もあって、ヴィエも「つれてってください」と名乗りを上げる。
 ヴィエは、トロールの話しを聞いたことはあるだろう。怪物だとゆうことは知っているが、近くでご対面・なんてことは、今までなかっただろう。そのトロールを相手に仇討ちの練習だ!と意気込んでいるのである。
 こうやって、私のPCの目標を、仇打ちのために強くなることと決めているので、自然にすべての言動が決まってゆく。そして私が知らないトロールは、冒険に出たばかりのヴィエもよく知らない事にしてしまう。これは、私が動物園の熊を知っていても、山道で熊と出会った事がないのと、同じくらいの違いだろう。
 最初の目標を「思い込み」で片ずけ、勝手に考えた設定にノってしまっているので、言動は考えることなく勝手に決まっていく。なりきってしまって、まるで私とヴィエの意識の切り分けすらできていなかった。この思いこみをいかにも有りそうなものにして、シナリオに逆らう必要がなかったことも、運がよかったのかもしれない。
 もっとも、マスターのVICONさんと、慣れたプレイヤーによるフォローの方が大きかった。うーん、初回からよいマスターとよいプレイヤーに囲まれて幸せだなあ。
 そして、PC達の雑談のうちに、次の日にトロールのいる洞窟へとクレアの父を探しに向かうことが決まった。



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