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戦士ヴィエの冒険
細江ひろみ(M−ヴィエ)
2005.9〜
ネイディア
月の鏡を手に、最初に吟遊詩人兼戦士のボーチャーが、蒼き乗り手に切りかかった。だが、ボーチャーは月の鏡が何であるか知らない。いくら「自分の生命と引換に、蒼き乗り手を倒す」事を願ったとしても、月の鏡はそういった物ではないのだ。
ボーチャーとは別に、蒼き乗り手に対抗できそうなのは、前回キャンペーンからの乱入者、女戦士ネイディアが、マスターの了解のもとに連れてきていた、龍。
だが、ボーチャーが前面に立っているために、ボーチャーが邪魔となって、龍は蒼き乗り手を攻撃できない。
これとゆうのも、新旧のパーティをまとめなければならないヴィエが、行動不能に陥っている為に、連係プレイができないのだ。
そして、とうとう龍がボーチャーをあきらめ、蒼き乗り手に炎を吐いた。こうしてボーチャーが死んだ時も、ヴィエはそれを知る事すらできない。
しかし、蒼き乗り手は、無傷だった。
その事をプレイヤーである私が知っていても、ヴィエが感じているのは、寒さ、暗さ、寂しさ、そして生きている間に為せなかった事への後悔だけだ。
仇討ちを諦め、龍騎士としてなにも為せず、シュビナスを救うことも、戦士として仲間を守る事も出来ない。古い仲間から無断で離れ、そして新しい仲間からも離れようとして、そして・・・
ヴィエがもっと素直に、仲間に対して助けを求めればよかったのだ。もっと甘えればよかったのだ。心を開いて、叫べばよかったのだ。
後悔ばかりがじっくりと、ヴィエの心を支配していく。ヴィエの倒れている大地の冷たさが、私にも感じられる。
セッションの中では、月の鏡はネイディアの手に渡り、そしてネイディアは月の鏡を使いこなした。蒼き乗り手は一刀のもとに切り捨てられた。ヴィエはもう、それすら知る事ができない。
そして戦いが終わった時、生き残った仲間達が、ヴィエの元に駆けつけてくれた。ヴィエの異常がただ事ではないと察したのは、ネイディアだけだった。他のメンバーは、そんなネイディアを見ても、大げさ過ぎると思っただけのようだった。月の鏡がありさえすれば、首さえつながっていれば死なずに済む、そう思っていた者も、いたかもしれない。
だが、ヴィエは絶望の内に倒れてしまっていた。何事も、ヴィエには為せないのだと、自分で信じきってしまっていた。ヴィエはネイディアの腕の中で、死ぬのだ。それだけが、救いだ。そう私にはわかっていた。
その時!マスターが他のプレイヤーにもわからないように、こっそりと、こう私に聞いたのだ。
「ヴィエの生死を決めよ」
!!!こんな話しは、聞いた事がない。PCの生死をプレイヤーが決めるだなんて!!マスターだって、普段「一旦決まったPCの死を変える事はできない」と言っているのに。なぜここになって、マスターがこんな事を言ったのか、それは今でもわからない。
しかし、私は迷わずにこう答えた。
「永遠の眠りを」
「では、最後の一言を」
マスターが、私にうながす。ヴィエは、もう話すことさえ辛い。ただ、剣をネイディアに託し、「私にはできない」そう呟いてから、マスターにヴィエの死を告げた。
マスターがヴィエの死を、他のPCにも告げてゆく。
そして、ヴィエは死んだのだ。
最後の戦いの、仲間の生死も確かめられず、やり残したことばかりが多いのに、ヴィエはこうして、死んでしまったのだ。
そして、生き残った者も寒空にたたずんだまま、このキャンペーン最後のセッションが終わったのだ。
ちょうど、ヴェイが死んでから、1年が経とうとしている。この原稿のために、プレイの記録を読みかえしたが、今でも胸が締め付けられるような気分になる。そして、誰かに抱きしめてもらいたい気分になる。寂しくなるのだ。
なにしろ、その頃はまだ、プレイヤーとPCの切り分けが上手くできなかったので、私が一旦ヴィエになってしまうと、関係ない雑談中にも、ヴィエの人格が、出てきてしまうほどだった。そんな時に、他のプレイヤーがいたりすると、いきなりマスターのいない突発セッションになったりするのだが、さすがにそれの記録までは残っていない。
ヴィエと化した私にとって、ヴィエの死は並ならぬショックな出来事だった。
おかげでその後延々と、関係ない雑談中に、「亡霊ヴィエ」が現われて、「寒い・・・」だの「暗い・・・」だの、「どうしてここには誰もいないの・・・」など、人の言葉にも耳を貸さず、延々と呟いているとゆう、はた迷惑な状況に、陥っていた。
まさかこの時は、こうして原稿を書くために、またもヴィエにひたる事になるとは思ってもいなかったが、原稿のためにプレイ記録を読んでいると、まざまざと、ヴィエの寂しさが甦るのだ。
おかげでこの年末も、たびたび雑談中に、亡霊ヴィエが現われている。
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