海のトリトンには2つの水中種族が、登場します。
ひとつはもちろん、トリトン族。もうひとつは、ポセイドン族です。
いずれも、大昔に滅んだ人間の文明が作り出した、人間と獣をあわせた多数の種族のうちの、海の2種です。
もっと多数の人工種が、陸にも海にも空にもいたようですが、少なくとも物語には、この2種しか登場しません。
トリトン族
トリトン族は、女性は人魚体型、男性は人間体型の、種族です。
ともに水中、空気中両方での呼吸が可能ですが、人魚形の女性が地上で活動するのは、かなりしんどい状態になります。
そして特に男性は人間そっくりですが、男女ともに髪は青く、そして男性でも足指がないようです。(秋田文庫版1巻22ページ参照)
トリトン族は、見た目よりもずっと人間とかけ離れた種族です。
まず、卵で生まれます。卵は一度に数個、受精卵で生まれるようです。
卵は太陽で温め、孵った時点では、まだ体長は20センチ前後。
最初から男は人間形、女は人魚形で、これは一生かわることは、ありません。
そしてトリトン族は、変体を繰り返しながら成長します。
つまり、人間のように少しづつ大きくなるのではなく、ある日突然成長するのです。
その成長にかかる期間は、半日から1日と短く、その間昏睡状態となります。
一回目の変体を終えると、ほぼ人間の6ヶ月程度の赤ん坊ほどになります。なりは赤ん坊ですが、中身は人間の1〜2才児程度のようです。
トリトンの成長の過程は、よくわかりませんが、幼児期に行方不明になった義理の兄が少年期に再登場したとき、10年以上が経過したとあります。
また、普通に学校に通ったりもしていたようですが、その間何度か変体しているようですから、4回で成人というわけでは、なさそうです。
しかし、海に出てからはしばらく変体がなく、次に変体したときほぼ人間の5年分成長し成人しました。そしてルカーが、「人間の5年分成長する」と言っているところをみると、それが普通のようです。
そしてピピ子は、このトリトンの少年期に一回目の変体を終えた状態で登場し、トリトンが次の変体を体験する前に二回目で幼児体型、三回目で少女体型、四回目で成人しました。
この成長の違いが男女差によるものなのか、それとも陸育ちと海育ちの違いなのかは、わかりません。
ですが、人間よりも心持成長が早いのが、正常なようです。ルカーも、「人間よりも育ちが早い」と、言っています。(1巻253ページ参照)
その後どうなるのかは、作品には書かれていません。
人間に育てられたトリトンのメンタルな部分は、人間への同化傾向が強く、海でトリトンとイルカたちに育てられた、よりトリトン族らしいピピ子を、ときおり異種として認識してしまうようです。
トリトン族の人口が多かったころ、彼らは海岸に、海を直接引き込んだ家を建てて住んでいたようです。
ポセイドン族
ポセイドン族は、不老不死の種族です。
体型はずんぐりむっくりで、額に角があり、そこから電撃のようなものを飛ばすことができます。男女差の体型の違いは、ありません。
しかし、子供のころは不老不死でもありませんし、体型は個体によってまったく異なるのです。
トリトン族が、種として独立した完成された種族だとすれば、ポセイドン族は未完成の種族といっていいでしょう。
ポセイドン族は、機械なしでは子をなせません。
そしてポセイドン族の伴侶は、ポセイドン族ではないのです。
そもそもポセイドン族は、一家族しか存在しません。
通常ポセイドン族は、その文明の力によって、さまざまな海の生き物にヒューマノイドの体型と知能を与え、部下や召使として使っているのですが、伴侶はその中から選ばれます。
こうして作られた亜種は、死ねば本来の姿に戻ってしまいます。
ポセイドン族の王(あるいは女王)は、多数の伴侶の間に、多数の子を作ります。
子供は伴侶の形質を受け継ぎます。
人間によく似た者もいますし、怪物じみたものもいます。変身や脱皮といった、特殊能力を持つものもいます。
人間に似た者は、人間のふりをして、人間と交渉を持つ者もいます。
多数の子の中で、もっとも王の眼鏡にかなったものが、次の王となります。
そして引退した前王は、永遠の眠りにつくのです。
この眠りは死の比喩ではなく、起きることができる眠りです。
ポセイドン族は、海底に巨大な建造物を作って、そこに空気を満たして、暮らしています。
ポセイドン族の子供の場合、空気呼吸はほぼ可能なようですが、水中でないと活動しにくい体型の者もおり、あまり便利ではなさそうです。
また、そうした者のための、歩行機のようなものも、用意されています。
ポセイドン族が、このような暮らしをはじめたのは、つい最近のことです。
陸の人間から資材や武器を買い、攫ってきた陸の人間を働かせるためにそうしているのです。
ポセイドンは、この巨大建造物をトリトンに対して使うと言っていましたが、実際には対人間用の砦でした。
それ以前どんな暮らしをしていたのかは、わかりません。
トリトン族とポセイドン族が争う理由
トリトンの親が残したメッセージによると、古代さまざまな種を作った人間たちは、トリトン族に海の守り手のような立場を与えたのですが、それが他の海の種族の不興を買ったのが始まりだったそうです。
しかしこれはトリトン族側からの見方ということを、差し引いて考えなければ、公平とはいえません。たぶんポセイドン族に聞けば、別の答えが返ってくることでしょう。
陸で育ったトリトンや、まだ若いポセイドンの子供ヘプタポーダは、憎いから憎い、一族の敵だから敵という、あいまいで、それゆえに修復のしようがない関係へ、きてしまっています。
その憎しみと長年の争いが、互いに互いを一族の仇としてしまっているのです。
しかし、大亀ガモノスが間に入り、この争いは一時は休戦し和解するかに見えました。
ですがポセイドン側の裏切りにより休戦は決裂、最終的にはポセイドン側の全滅で終わりました。
1 「版による違い」
3 「グッズのこと」
次回予告
昔のグッズはアニメものでレア扱い。
最近原作版グッズが作られてるんだけど?
とにもかくにも、イルカクリーック!